［TGS2023］レンタル愛人ADV「Truer Than You」出展も。インディーゲームコーナーの謎ブース「Greater Copenhagen Region」を取材

　東京ゲームショウ2023のインディーゲームコーナーに，「Greater Copenhagen Region」（コペンハーゲン広域地域）と名付けられたブースが出展されている。


　コペンハーゲンは，デンマークの首都にして人口が約65万人の同国最大の都市だ。そして「Greater Copenhagen Region」とは，コペンハーゲン自治市と，その東にあるエーレスンド海峡を挟んだスウェーデン最南部に位置するマルメ自治圏が膝を合わせ，両地域の80にも及ぶ自治体や政府組織が連合した経済振興政策の名称であるという。

　コペンハーゲンとマルメは，人口規模が似ている都市だ。2000年には，全長約50kmの海底トンネル（一部は鉄道道路併用橋）「オーレスン・リンク」が開通したこともあり，経済的な結び付きが強化されている。
　列車を使うと1時間もかからずに移動できる距離で，日本ならば東京駅から新横浜，もしくは大宮くらいの感覚だろう。通勤圏内であるのは間違いない。

Greater Copenhagenは，人口150万人にも及ぶメトロポリスの呼称だ。デンマークのシェラン島だけでなく，スウェーデンのマルメを含むスコーネ地方一帯をひとつの経済圏とする

　スウェーデンの都市であるマルメにとって，コロナ禍で顕著になった労働供給力を，600?以上も離れた首都ストックホルムに頼ってばかりはいられないこともある。さまざまな角度から，自主的な産業育成を行おうとしているわけだ。

　ゲーム産業に目を向けると，コペンハーゲンには「HITMAN」シリーズでおなじみのIO Interactive，そして「LIMBO」（PC / PS3 / Xbox 360 / PS Vita）や「INSIDE」（iOS / PS4）などで知られるPlaydeadがある。
　またマルメには，「Amnesia」シリーズのFrictional Gamesや，「リトルビッグプラネット 」や「リトルナイトメア」シリーズを手掛けるTarsier Studiosに加え，King.comやUbisoftなどが支社スタジオを抱えている。
　しかし，その労働者の数は，双方合わせても3000人ほど。今回の出展は，産業育成と地域住民の就職先確保のためにも，より多くの投資が集まることを期待してとのことだろう。


　もっとも，“与えてもらう”だけの期待だけでなく，“与える”ための施策を行っているのも「Greater Copenhagen」の面白いところだ。
　ブースでは，「Game Habitat」という取り組みについても紹介していた。これは，マルメにあるゲーム開発者向けのコワーキングスペース「DevHub」という施設である。4〜5人の開発チームであれば，月々に最低19万クローネ（約40万円）ほどで，ワークステーション付きのオフィススペースを使え，カンファレンスルームやミーティングルーム，フロントデスクやインターネットを含む各種アメニティのサービスも受けられるという。
　現在は，約20社がスペースを共有し，ゲーム開発においてはアイデアを出しあうなどしているらしい。ヨーロッパ的なゲーム開発のノウハウ共有や，高度なビジビリティに期待でそうだ。

なんとも快適そうなコワーキングスペース「DevHub」は，マルメ中央駅から10分ほどの立地。「望むのであれば格安アパートの手配や3か月後のオフィスレンタルの斡旋も行う」とのことで，有志は応募してみよう

　このDevHubだが，国内での展開も予定されている。東京ゲームショウ2023の会場では，日本のゲーム開発者や企業に向けてのプロモーションを行っており，施設内のオフィスを最長3か月間，無料で貸し出す計画であるという。

　オフィスに滞在中は，同じ施設内の開発者たちと交流したり，そのノウハウやアイデアを交換し合ったりできる。また地域のイベントへの参加，パブリッシャや投資家の紹介，さらにGreater Copenhagen Region地域内でのネットワーク作りも手伝ってくれる。
　説明してくれた担当者によると，これまでにEU圏を中心にした参加はあったものの，日本のメーカーやゲーム開発者がDevHubを利用したことはないとのこと。日本の開発コミュニティからの応募を切望しているようであった。
　読者の中で，海外のゲーム作りのノウハウを吸収して経験を培いたいという人がいれば，掛け合ってみると良いのではないだろうか。


　同ブースには，DevHubを利用していたというTranscenders Mediaも出展していた。現在は，マルメから約70km離れた，人口6500人にも満たないトメリラという村にオフィスを構えているという。
　彼らが開発している「Truer than You」は，ノンバイナリーで27歳のリン（Rin）を主人公にしたノベルアドベンチャーゲームだ。物語は，レンタル愛人業に足を突っ込んでいくリンが，仕事を通じて10人ほどの相手と感情的・社会的関係を持っていくもの。
　国内の“レンタル彼女”や“レンタルおじさん”などにインスパイアされたとのことだが，かなり尖ったナラティブ重視の作品になっているようだ。

Transcenders Mediaが開発するナラティブADV「Truer Than You」

　ちなみに，すべてが恋愛関係で進むというわけではないらしい。筆者が選択した「Vince」のミッションでは，成り行きで顔にマスクを着け，そのまま政治テロ犯的なビデオメッセージを作られてしまうという，何か不気味なストーリーが展開していた。
　同ミッションで登場する3人のキャラクターとは，さらに親密な関係を築いていくことができる。そして，プレイヤーの会話選択によっては，異なるエンディングに到達する。会話選択は，何も選択しなくても進行していく形式で，これらを“開花型選択”と表現していた。
　Steamのストアページが用意されているものの，リリース時期などは未定。日本語化の予定はないとのことだが，テーマとしてはかなり攻めたストーリーを楽しめるのは間違いなさそうである。

「Truer Than You」を開発するTranscenders MediaのCEOで，ゲームデザイナーのBobbi A Sand氏（左）と，CTOでありプログラマーのPixie Johan Anderson氏

「Greater Copenhagen Region」公式サイト

「Game Habitat」公式サイト

「Truer Than You」Steamストアページ

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